
やねよりたーかーい こいのーぼーりー
我が家はマンションの住まいのため屋根が無いので、小さなこいのぼりを部屋に飾るだけです。
「屋根より高いこいのぼり」は、昔から私の憧れでもあります。
ところが最近、近所の方が「屋根より、相当高い」こいのぼりを飾るようになりました。
まあ、立派!!
やっぱり大きなこいのぼりが大空にたなびく姿は良いですね。
子供たちと風になびくこいのぼりを見ながら歌うのは、やはり童謡「こいのぼり」でしたが…あれ、この歌、お母さんがいない…
ということで今回は、童謡「こいのぼり」に注目。
こいのぼりの作詞家の人生、お母さんのいない歌詞のなぞなど、調べてみました。
近藤宮子作詞「こいのぼり」とは
まずは、「こいのぼり」の歌詞です。
童謡「こいのぼり」
やねより たかい こいのぼり
おおきい まごいは おとうさん
ちいさい ひごいは こどもたち
おもしろそうに およいでる
作詞:近藤宮子 作曲:作者不詳
誰もが知っている童謡「こいのぼり」。
その作詞家と偽作詞家が、実は「こいのぼり」の著作権を争って裁判を起こしたって、知っていました?
童謡とはかけはなれた、ドロドロな雰囲気が何とも言えません。
「こいのぼり」作詞は近藤宮子さんという女性です。
満州事変の少し前、近藤宮子さんは「こいのぼり」をはじめとして子供へ向けた歌詞を10編作り、日本教育音楽協会に採用されました。
その後日本が戦争へ突入していく中、宮子さんを含めた多くの作詞家が作った歌は、当時の文部省の方針のもとで作者不詳とされたのでした。
戦後、戦争中に著作権が取り上げられていた様々な無名著作物に、名乗りを上げるよう呼びかけが行われます。
しかし宮子さんは「誰かが歌ってくれればそれでいい」として名乗りをあげませんでした。
なんて欲のない…良い人ですね。
ところがその後、うそをついて「自分が作った」と名乗り出た悪い人が現れました。
宮子さん、時に76歳。
なんとそこから、裁判を戦うことになるのです。
裁判はもちろん、宮子さんが勝利します。
その時すでに86歳。
裁判に10年もかかり、宮子さんの著作権が消失した後のことでした。
それでも勝利したのは、正義感と歌への愛情の導きのようで感慨深いです。
お父さん・子供たち… お母さんは?
偽りの作詞家に鉄槌を下した近藤宮子さん。
当時としてはかっこいい革新的な女性だったんだろうな…と勝手に想像を膨らましていたら、どうも普通に保守的な方だったようです。
男尊女卑の時代背景
「こいのぼり」の歌詞にお母さんが出てこない理由は、当時の家長制度から想像することができます。
明治、大正、昭和初期。世は男性中心に物事が運んでいました。
家庭も同様です。
当時の『親子』とは、一般的にお父さんと息子です。
女性は出る幕無しです。
だから「真鯉と緋鯉はお父さんと長男」だったようです。
ところが戦後しばらくして家族の形が変化します。
現在の「真鯉と緋鯉と小鯉はお父さんとお母さんと子供たち」の形になったのです。
「こいのぼり」がつくられたのが昭和6年。宮子さんが専業主婦であったことを考えると、何の疑問もなく「おかあさん」が使われなかったのもわかります。
私個人からすると、やはりお母さんが影の存在であるのはさみしい…今の時代でよかった。
幻の2番がある?そこにはお母さんが!
「こいのぼり」にお母さんの存在がないことを嘆いたのは、実は私だけではなかったようです。
なんと昭和50年代の音楽の教科書に掲載際されていた「こいのぼり」には2番があり、歌詞の中には「おかあさん」が入っていました。
やねよりたかい こいのぼり
おおきいひごいは おかあさん
ちいさいまごいは こどもたち
おもしろそうに およいでる
作詞:作者不詳
1番「おおきいまごいはおとうさん」→2番「おおきいひごいはおかあさん」
当時の家族のありかたが、過去の家長制度から現在の『みんな仲良し家族』な風潮に変わっていく中で、このような歌詞が教科書に掲載されたのは非常に面白いですね。
別バージョンの2番・3番の歌詞
「こいのぼり」2番
みどりのかぜに さそわれて
ひらひらはためく ふきながし
くるくるまわる かざぐるま
おもしろそうに およいでる
作詞:作者不詳
「こいのぼり」3番
5がつのかぜに こいのぼり
めだまをピカピカ ひからせて
おびれを くるくるおどらせて
あかるいそらを およいでる
作詞:小林純一
2番は作詞者不明、3番は、作詞家の小林純一さんです。
昭和44年の教科書「新訂標準おんがく1」に載ったそうです。
こどもの日は、「お母さんに感謝する日」
こどもの日は、1948年に制定された祝日です。
普通、子供や男の子の日として認識されていますが、実はお母さんに感謝をする日でもあるんです。
祝日法2条には、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ことが趣旨だと書いてあります。
なぜ母だけ?父は?と思いますが、父に感謝するのは当然なのでわざわざ記載しなかったとか。
5月はこの後「母の日」がありますから、2回も感謝される日があるなんて嬉しいですね。
でも母親としては、子供が元気に楽しそうに日々を過ごしてくれているのが一番嬉しいですけどね。
現代のこいのぼりは家族仲良く
現代では、こいのぼりはこう飾られているようです。
お父さん・・・大きな黒い真鯉
お母さん・・・中くらいの赤い緋鯉
子供たち・・・小さい青や緑・ピンク・オレンジ色の小鯉
家族仲良く大空を泳いでいるのがほほえましいですね。
子供が増えるたび、小鯉を買い足したりもするようです。
まとめ
童謡って子供たちが歌うものですが、作って世に出すのは大人たち。
だからこそ戦争という時代背景や著作権に振り回されることもありますが、そんな中で自分の生んだ歌を守った宮子さんは、素敵な大人だと感じました。
宮子さんが表現した「親子=父と長男」のスタイルは薄れつつありますが、歌に込められた愛情は「こいのぼり」を楽しそうに歌っている子供たちに注がれていくのでしょうね。

おかあさんも一緒♪